個人事業主が支払う税金のまとめ
個人で事業を行うようになると、避けては通れない「税金」。
サラリーマン等で雇われて働いている場合には、税金はあらかじめ給与から天引きされていて、計算や申告・納付についてあまり意識していなくても大きな問題はないかもしれません。
しかし、事業主となったのであれば、税金の計算や申告・納付について全く無関係というわけにはいきません。
個人事業主の税金についてどんな税金があるのか、いつ・どれぐらい支払う必要があるのか概要をまとめてみました。
個人事業主が支払う主な税金の一覧表
税金 | 説明 |
---|---|
所得税 | 【概要】 ・1年間の所得に対する国税 ・自分で計算し税務署に申告書を提出する |
【税率】 ・5%から最高45%まで ・所得に応じて段階的に税率が高くなる |
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【時期】 ・3/15までに申告、納税 |
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住民税 | 【概要】 ・前年1年間の所得に課税される ・「都道府県民税」「市町村民税」の総称 ・送られてくる納税通知書の金額で納付 |
【税率】 ・所得割10%(都道府県4%、市町村6%) ・均等割5,000円 ※地方公共団体によっては異なる場合あり |
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【時期】 ・6月、8月、10月、翌1月の年4回納付 |
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個人事業税 | 【概要】 ・個人の営む事業に対してかかる税金 ・送られてくる納税通知書の金額で納付 |
【税率】 ・業種によって3%から5% |
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【時期】 ・8月、11月の年2回納付 |
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消費税 | 【概要】 ・売上消費税と仕入消費税の差を納付 ・自分で計算し税務署に申告書を提出する ・赤字でも納付する場合あり ・場合によっては戻ってくる(還付)ことも |
【時期】 ・3/31までに申告、納税 |
その他の税金
税金 | 説明 |
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源泉所得税 | 【概要】 ・給与を支払っている事業主が対象 ・支払給与から所得税を天引(源泉徴収)する ・翌月10日までに税務署に納付 ・報酬にも源泉徴収の対象となるものがある 例)原稿料、講演料、弁護士報酬など |
住民税 (特別徴収) | 【概要】 ・給与を支払っている事業主が対象 ・納付書は従業員の住む市町村から送られる ・支払給与から住民税を天引(特別徴収)する ・翌月10日までに各市区町村に納付 |
印紙税 | 【概要】 ・契約書や領収書等の文書が課税対象 ・作成文書に収入印紙を貼り消印して納税 ・文書の種類や記載金額で税額が決まる |
固定資産税 | 【固定資産税】 ・所有している土地、建物に課税される ・事業使用部分があれば、その分は経費に |
【償却資産税】 ・事業で使用している資産(償却資産)が対象 ・償却資産は機械装置、器具備品などが該当 ・1月31日までに市町村等に申告書を提出 ・課税標準が合計150万円未満の場合は免税 |
所得税
所得税の概要
所得税は個人の1年間の「所得(もうけ)」に対する税金です。
「所得(もうけ)」の金額とそれに対する税金の額を自分で計算し、翌年2月16日から3月15日までの期間に確定申告します。
所得の計算
「所得(もうけ)」は全部で10種類に分類されています。
会社から給与が支払われたら「給与所得」、不動産を売却したら「譲渡所得」と、その性質で分類され、それぞれに計算方法などが定められています。
個人で事業を行った場合は「事業所得」となり、「収入」-「必要経費」=「事業所得」で計算します。
所得控除
所得に税率を掛けて所得税の金額を計算しますが、その計算の前に、「所得控除」で所得を減らすことができます。
一律で38万円が控除される「基礎控除」のほか、要件に該当する場合に控除できる「医療費控除」「生命保険料控除」「扶養控除」など全部で14種類の所得控除があります。
「所得控除」で所得が減ると、支払う所得税の金額が減ります。「所得控除」により納税者の個人的な事情を加味することで、税負担に一定の配慮がされています。
支払う所得税の金額計算
所得税の税率は、所得が多くなるに従って段階的に高くなり、最高で45%となります。
税額は速算表を使用して計算できます。
税額=(A)×(B)-(C)
課税される所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例)所得が1000万円の場合
所得税額=1000万円×33%-1,536,000円=1,764,000円
住民税
「都道府県民税」と「市町村民税」とをあわせて「住民税」と呼び、住んでいる地方公共団体から課税されます。
所得税を確定申告していれば、改めて住民税用に申告書を提出する必要はありません。
税額は所得税と同様に1年間の所得から所得控除を引いた金額をベースに算出する「所得割」と一律同額の「均等割」の合計額になります。
所得割の税率は10%で、所得が多くなっても変わりません。
なお納付する税額は市区町村から通知されるため、自ら計算する必要はありません。
市区町村から送られて来る納付書で6月、8月、10月、翌1月の年4回に分けて納付します。
個人事業税
個人の営む事業に対してかかる税金です。都道府県から課税されます。
対象となる事業は70種類ですが、ほとんどの事業は対象となります。
所得税を確定申告していれば、改めて申告書を提出する必要はありません。
税額は1年間の事業所得と不動産所得の合計から各種控除額を控除した金額に税率を掛けて算出されます。
なお税率は業種により3%から5%です。(大半の事業は5%)
納付する税額は都道府県から通知されるため、自ら計算する必要はありません。
都道府県税事務所などから送られて来る納付書で8月、11月の年2回に分けて納付します。
消費税
消費税の概要
所得税、住民税、個人事業税は「所得(もうけ)」をベースに課税されています。
これに対し消費税は、商品の販売、サービスの提供といった課税売上(消費税がかかる売上)をベースに計算されます。
消費税の納税義務者は3月31日までに申告書を提出する必要があります。
消費税の納税義務
消費税の納税義務があるかどうかは、原則として1年ごとに判定します。
個人事業主の場合、次の2つのどちらかに該当する年は、消費税の納税義務が発生します。
- 2年前の「課税売上高」が1000万円を超えている
- 前年1月から6月の「課税売上高」と「給与支払額」が両方とも1000万円を超えている
個人事業主が新規開業した場合、2年前の課税売上が存在しないため、基本的に1年目と2年目は免税(消費税を納税しなくてよい)になります。
ただし、開業1年目の1月から6月までの「課税売上高」と「給与支払額」が両方とも1000万円を超えている場合には開業2年目から納税義務が生じます。
消費税の計算
売上の消費税から仕入・経費等の消費税を引いた金額を納付することになります。
消費税の納付額は、所得(もうけ)の金額から直接的に計算することは難しいです。
なぜなら売上・経費ともに消費税がかかるものとかからないものがあるためです。
例えば「給与」「減価償却費」「支払利息」は経費となっても消費税はかかりません。
そのため、事業が赤字でも消費税は納税しなければならないというケースも発生します。
消費税の納税資金には注意しておく必要があります。
なお、課税売上高が5000万円以下の場合には事前に届出することで、簡易課税制度という簡便的な計算方法にすることができます。
簡易課税では、仕入・経費等の消費税は使用せず、売上の消費税だけで納付税額を計算しますので、納税額の予測はし易くなります。
ただし、原則的な計算方法と比較し納付税額が変わりますし、簡易課税を選択すると2年間は変更できませので、不利になることがないよう、事前に検討が必要です。
消費税の還付
事業用固定資産の購入がある場合、購入代金に消費税が含まれますが、その消費税は売上の消費税から引くことができます。
そのため、機械や建物といった高額な固定資産の購入がある場合には支払った消費税の方が多くなることもあります。
そうすると、納付額がマイナスとなり、申告により還付を受けることができます。
ただし、消費税の免税事業者や簡易課税を選択している場合等は還付を受けることができませんので、高額な設備投資が計画されている場合などは、還付の可否について予め検討しておいた方がよいでしょう。(設備投資の前年中に届出などが必要な場合もあります)
これらの判断は難しいので税理士等の専門家に相談した方がよいでしょう。
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